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福岡高等裁判所 昭和36年(ラ)154号 決定 1961年8月24日

抗告人 高木光士

主文

本件抗告を却下する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告人の抗告の趣旨は「原審判を取り消す。抗告人の申立を却下する。」との決定を求め、抗告の理由として、「(一)抗告人は昭和三十六年五月原裁判所に照会した結果、原裁判所は原審判書謄本を原審判申立書記載の抗告人の居所である東京拘置所宛に送達すべきところを申立人の不在先に送達しただけで送達先不明としてたやすく公示送達に附した事実が明らかとなつた。よつて抗告人は送達の追完を求めた結果原裁判所は昭和三十六年七月八日原審判書謄本を抗告人に送達した。

そこで抗告人は本件抗告を提起した次第である。

(二)抗告人は原審判を申立てる以前である昭和三十二年一月十九日同一相手方に対する夫婦同居を求める審判の申立を東京家庭裁判所に提起した(同庁昭和三二年(家)第五二四号)ところ、その後同裁判所から何の沙汰もないので抗告人は右審判は完結したものと判断し、改めて原裁判所に対し原審判を申立てたところ、東京家庭裁判所の昭和三二年(家)第五二四号事件はその後同裁判所昭和三二年(家イ)第二一〇号夫婦同居家事調停事件として今なお同裁判所に繋属中であることが判明した。以上の次第で原審判事件と前記事件とは抗告人の二重申立となるから、後の申立につきなされた原審判は不適法として却下せられるべきである。」というにある。

よつてまず本件即時抗告申立の適否につき検討するに、記録によれば抗告人の原審判申立書には原審判書表示の住所の外居所として「東京都葛飾区小菅町一、二八四番地東京拘置所内」の明記があるにかかわらず、原裁判所は原審判書謄本を前記抗告人の住所宛特別送達に附したのみで、右送達が転居先不明の理由で不能となるや、更に前記居所宛に再送達を試みることなく直ちに(昭和三十五年三月十八日)公示送達に附したものであることを認めることができるから、抗告人はその責に帰すべからざる事由により即時抗告の期間を守ることができなかつたものといわねばならないところ、更に一件記録中の原裁判所書記官内山茂美の抗告人宛説明書写、抗告人の更正及び変更審判申立書に徴すれば、おそくとも抗告人は昭和三十六年六月九日には原審判がなされたことを知つたものと認めることができるから、抗告人において非訟事件手続法第二二条に従い同日から一週間内に不変期間の追完を申立てるべきであるにもかかわらず、同期間内に追完の申立をした形跡がない本件においては、結局抗告人の本件即時抗告申立は家事審判法第一四条所定の即時抗告期間を徒過してなされたものというべきである。よつて本件抗告は不適法であるからこれを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 川井立夫 判事 奏亘 判事 高石博良)

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